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2018/03/22

腕さえあればどこでも働ける

小林市 食と農の魅力創生シェフ 地井潤さん



小林市に彗星のごとく現れた地井潤さん。フランス、オーストリア、スイスの日本大使公邸料理人を歴任し、優秀公邸料理長として外務大臣表彰も受けている凄腕シェフです。

世界を股にかけ活躍していた地井さん。昨年末に大阪から小林市へIターンをしました。きっかけは、小林市が出した「食と農の魅力創生シェフ」の募集記事でした。「これだけ良い食材があるならば、宮崎でも勝負できる」と感じていたという地井さん。新しい食の可能性を追い求める地井さんの挑戦を追いました。


運命に導かれるように小林へ



小林市の新事業「食と農の魅力創生事業」は、「小林の強みである豊かな食材を生かしきれていない」という課題解決の一環として、地元食材を活用した料理の提供と対外プロモーションを行う取り組みです。

市がシェフのパトロンとなってレストランを開店し、同時に地井さんは地元の子どもたちへの食育教育、生産物のブランディングなどを行います。小林市は、まちを挙げて立ち上げた事業に、輝かしい経歴をもつ地井さんが応募してきたとき、「奇跡が起こった」と喜んだと言います。

地井さんが小林を選んだ背景には、93歳のお母さんの存在がありました。

地井さん「小林は母の故郷なんです。今まで都会で多忙な日々を過ごしてきたので、母とゆっくり過ごす時間を取りたかったですし、仲の良い8人の兄弟たちと会わせてあげたくて、一昨年ほど前から移住を検討していました。そんなとき、偶然このプログラムを知りました。私にとってもどんぴしゃのタイミングだったんです。」


食材×料理で新しい価値をつくっていく



地井さんの背中を押したものはもう一つ。恵まれた宮崎の食材です。

地井さん「私が一番とりこになったのは、叔父が家庭菜園で作っているきゅうりでした。素人で堆肥から土を作っていますが、元々ある土が黒ボク土で味が濃いんです。

店頭の野菜も都心とは新鮮さが違います。例えば葉付きで売られている大根なんて、大阪ではほぼありませんでした。ただ、田舎でもその葉っぱを調理できる人は少なくなってきています。せっかく地域にある素材を捨てるのではなく、美味しく活かしていく選択肢も広めていければと思いました。」

まちの民家になっている柿など、何気ない風景の中からも食を通した多くの可能性を見出しています。

地井さん「多くの家の軒先に柿がふんだんになっていますが、放置して渋柿になっているものだらけなんです。これを干し柿にすれば、捨てるものが美味しい食べ物になるのになって。価値のないものに、いかに僕が付加価値をつけていくかというのが、ここで僕ができることではないかと思いました。」


食べる方の希望を体現できるのがプロフェッショナル



小さい頃から大衆食堂を営むお母さんの背中を見て育ち、高校生のときに本格的にシェフを目指した地井さん。大阪の専門学校で料理を学び、ホテルの料理人として就職をしました。

地井さん「初めて働いたホテルは、集団教育を大切にする職場でした。一人のいい加減な仕事でホテルそのもののクオリティが下がると。その責任感や協調性は今も身体に染み付いています。」

ホテルの厨房で腕を磨き、23歳で公邸料理人としてパリへ。キャリアで言うと大飛躍でした。

地井さん「当時は若かったこともあって、料理も自分よがりなところがありました。お客様本位というよりは自分のテクニックを見せる料理ですね。しかし、公邸では大使ご夫妻の好みや趣向に合わせたものを提供しなければいけません。そのときに、夫妻の気持ちになって料理を提供するのか、自分の主張を通すのかで、メニューも喜ばれ方も変わってきます。食べる方の希望を体現できることこそがプロフェッショナルなのだという考え方に変わりました。

パリに渡った25年前は、まだまだ和食が普及しておらず、生魚にも抵抗がある時代でした。そんななかでオマール海老を生で提供し、大使公邸のお客様に美味しいと驚かれたのはいい経験です。固定観念さえなければ受け入れてもらえるものだと学びました。」


子どもたちに「ホンモノの味」を知って欲しい



地井さんのレストランは4月末オープン予定。準備に追われながらも、地元の人々や子どもたち相手にセミナーや勉強会などを開いています。

地井さん「先日は小林小学校の立志式講演会に、鶏野菜のブイヨンと粉末で作ったチキンコンソメを持っていきました。インスタントを否定しているのではなく、ホンモノの味を知っておいてもらいたい。素材の良さを体感してもらうこと、本物を知っているということが今後重要になってくると思います。」

地域で開催したセミナーでは、小林の果物のB級品をドライフルーツにしたものを使い、ヒット商品を作りだすというワークショップを行いました。子どもと農家さんの交流の場を作ったり、姉妹都市の能登で地井さん自ら小林産食材を売り込んだり、食を通したさまざまな交流、まちを元気にする取り組みをしかけています。


食を通じて小林の魅力を発信する



小林の期待を一身に背負うレストランは、「Kokoya de Kobayashi(ここやっど小林)」と名付けられました。小林の豊穣な黒ボク土や水、人によって育った食材をふんだんに使い、小林にしかない個性的な魅力を発信していきます。

地井さん「レストランでは、“小林に来ないと食べられない”看板メニューを開発し、市外からも小林の食をめがけて足を運んで欲しいです。世界の三ツ星レストランは、田舎の辺鄙なところにあることが多いんです。三ツ星は“そこに行くために旅をしなさい”というのが例えですから。

小林には畜産もあるし野菜もある。湧水に育まれた淡水魚も含め、地域の方が作ったものだけで一夜ディナーができるほど食材に恵まれた地です。最終的に食を通じて小林の魅力も発信していけるといいですね。」


地域のソウルフードを改良し、サプライズを起こす



大阪で総料理長を務めていたレストランで、おでんをフレンチ仕様に改良した「フレンチおでん」などヒット商品を次々と生み出した地井さん。常に行列ができ、数多くのテレビ番組で紹介されるほどの人気でした。

地井さんのビジョンは「フレンチの敷居を低くして、地元に愛されるレストランをつくる」こと。地域のソウルフードを改良し、親しみやすい形でフレンチを広めていきたいと考えています。

地井さん「まずは地域の方に愛していただき、そこから戦略的に県内外へ広めていきたいです。普段の食卓にありふれている食材を使うことで、フレンチをひとつ身近に感じ、そして改めて小林の食材の素晴らしさに注目していただければ。

たとえば、あちこちの家の庭になっているハヤトウリ。若い世代の方は食べなくなっていますが、私がパスタやサラダにして出すと親戚の子が“これ何?”って言い、“ウリだよ”というと驚くんです。そういう遊び心やサプライズ体験が付録でついてくるお店にしたいです。」



私たちにできるのは”食材のサプライズ”。生産者の方々が創意工夫して作っている食材を、私たちが料理することで次世代につなげていきたい。私たちがいくら料理を作っても、食材がなかったら何もできません。そこが重要です。」

都心のトップクラスで研鑽を積んだシェフが、小林で腕一つで新たな魅力を開拓する。宮崎にいる若者にも刺激となり、宮崎の食のレベルがまたひとつ上がる可能性を大きく秘めています。地井さんと小林市の挑戦が、今後宮崎県全体にどのような影響を及ぼすのか、地井さんの手さばきに期待が高まります。

※地井さんのお店、「Kokoyado de Kobayashi」は4月末のオープン予定です!オープニングスタッフも募集しています。
https://kokoya-de-kobayashi.com/recruit/

(Text:齋藤めぐみ)

地井潤:大阪府出身。フランス、オーストリア、スイスの日本大使公邸料理人を務め、優秀公邸料理長として外務大臣表彰を受賞。欧州の星付きレストランでも研さんを積む。辻学園調理・製菓専門学校外来講師、株式会社サンテグループ 取締役総料理長。小林市では食と農の魅力創生事業「Chef Patronage Programme(シェフ パトロナージュ プログラム)」の一環としてKokoya de Kobayashiをオープン。シェフの目線から地場産食材使用した料理の提供のほか、市内生産者への調理側視点でのアドバイス、児童・生徒への食育、当地生産物のブランドアップへの協力などを行っていく。SmaSTATION!!(テレビ朝日)、しゃべくり007(日本テレビ)などテレビ出演多数。

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